第8章 No.8
昨日の総悟とゆきのデート、ゆきからオレの携帯電話に電話はかからなかった。
昨日、オレは二人の跡を付けようかとも考えていたが、用意周到な総悟にそれは阻止されたのだ。
屯所に帰ると、オレの机には提出期限ギリギリの重要書類(1番隊の分)が大量に置かれてあり、更に1番隊の隊士達が何かと尋ねてきては、ややこしい案件の打ち合わせや報告をしに来た。
そして、総悟は深夜に帰って来た。
「総悟、てめぇ、ゆきに変な事してねぇだろうな!」
翌朝、オレは食堂へと向かう総悟を捕まえて、問い質した。総悟はいつもの如く朝練をサボり、起きたばかりのようだ。
「なんですかぃ、朝っぱらから人聞きの悪い。変な事なんてしてやせん。デートしてきただけでさぁ」
「じゃあなんで帰りが深夜になるんだよ!」
総悟は胸倉を掴んでいたオレの手を払い退けると、襟元を正した。
「土方さん、あんた、ゆきさんの彼氏でもなんでもないんでしょう。あんたにそこまで口出しする権利、ないんじゃないですかぃ?」
眼光鋭くオレを見る総悟。
「ぐっ…」
確かにその通りだ。
「オレは、ゆきさんのことが好きでさぁ。まだ数回しか会ってないけど、でもあの暖かさと懐の深さに惚れやした」
「‼︎ 」
総悟の目は本気だった。
「ゆきは、オレがもらいやす」
そう言って総悟はオレの横をすり抜け、食堂へと歩いて行った。