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十四郎の恋愛白書 1

第7章 No. 7


「ち、違うんだ、ゆき!」

オレは慌てて弁解しようとしたが、またもや総悟の茶々が入る。

「何が違うんですかぃ。あんたの部屋の本棚、今少女漫画で一杯でしょうが」
「うるせー‼︎ 総悟、てめーは黙ってろ‼︎」

あぁ、もう最悪だ!ゆきに知られるなんて!
少女漫画なんて恋愛バイブルにしなければ良かった!あの時のオレをブン殴ってやりたい!

「トシさん、少女漫画がお好きなんですか?」

ゆきは尚も興味津々に聞いてくる。

「うっ…‼︎」

分かってるよ。こんな大の男が、刀引っ提げた野郎が、少女漫画読んでたら普通引くよな。
でも違うんだ。
オレは決して趣味で読んでるんじゃなくて、勉強の為に…。

って! いい年した男が恋愛のイロハを学ぶ為に少女漫画読んでるんだなんて、言えるかー‼︎
どんだけヘタレなんだよ、オレ‼︎

結局オレが何も言えずに俯いていると、ゆきはカウンター越しに手を伸ばし、背伸びすると、

よしよし。

またオレの頭を撫でた。

「ぇえ⁉︎」

これには総悟がビックリだ。

「っ、ゆきさん、あんた何を…」
「うふふ。だって、トシさんたら真っ赤になって俯くんですもの。かわいくって」
「ええっ⁉︎、、か、かわいい⁉︎ 土方さんがですかぃ⁉︎」

総悟は椅子からずり落ちんばかりだ。
ゆきは尚もオレの頭を撫でながら言った。

「私も少女漫画、結構好きなんです。良かったら今度トシさんのお持ちの単行本、貸していただけません?」
「…‼︎ ゆき…‼︎」

天使か‼︎

「あぁ、もちろんだ!いくらでも貸してやる!何なら全部やるよ!」
「まぁ、本当ですか?嬉しいです」

ゆきはニコリと微笑むと、「さ、トシさんも座ってください。いつものでいいですか?」と聞いてきた。
オレの少女漫画嗜好に対する引き加減は全く感じられない。
ゆきはきっと、天使の生まれ変わりに違いない。

不機嫌そうに再び箸を動かし始めた総悟から、一つ空けて座る。

総悟め。オレの恥ずかしいネタをバラしてゆきに幻滅させるつもりだったのだろうが、そうはいかねぇ。
ゆきはそこらへんにいる普通の女じゃねぇんだよ。天使なんだよ、天使。慈愛の心を持ってんだよ。

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