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十四郎の恋愛白書 1

第7章 No. 7


今日もゆきに会いに定食屋に赴く。

今日は思い切ってゆきをデートに誘おう。
映画がいいか、遊園地がいいか…。

オレは少女漫画(バイブル)のワンシーンを思い浮かべながら店の戸を開けた。

しかし先客がいた。

「そ、総悟…!」

カウンターには隊服ではなく袴姿の総悟が、唐揚げを頬張っていた。

「土方さん、お先にいただいてやす」

頬袋よろしく頬を膨らませてモグモグする姿は幼い。
そんな姿に母性本能をくすぐられるのかゆきは優しい笑みを向けている。

「総悟、な、なんでおまえがここに…?おまえ、今日非番だっただろ?」

オレが顔を引きつらせながら言うと、総悟はゴクンと飲み込んでから余所行きの笑顔でニコリと笑った。

「いやぁ。オレ、ゆきさんに以前ケガの手当てをしてもらったことがありやして。それで御礼に今日はこの後、ゆきさんと2人で映画見に行くことになってるんでさぁ」

な、な、なんだってぇ‼︎

雷に打たれるような衝撃とはこういう事を言うのか。
ゆきとのデートの先を越されるなんて!

「お、まえ、ゆきがこの店で働いていたこと、知ってたのか⁉︎」
「知りやせんでしたが、最近知りやした。土方さんの不審な行動の跡を付けていたらこの店に辿り着いて。中に入ったらゆきさんがいたんでさぁ」

一生の不覚‼︎

「不審な行動って、オレの何処が不審なんだよ!」

総悟はクピリと水を飲みながら、横目でオレを見た。

「不審でしょう。普段屯所では眉間にシワ寄せて隊士に怒鳴り散らしている鬼の副長が、スキップしながら定食屋に通うなんて」

「スキップ⁉︎」
「スキップなんてしてねぇ‼︎」

ゆきとオレの声がハモる。

総悟の言葉は止まらない。

「最近は少女漫画にハマってて、初めはコソコソ読んでたと思ったら、今はもう隊士の前でも可愛い単行本を堂々と広げてるんですぜ。ゆきさん、どう思いやすか?」
「そ、総悟‼︎ てめぇっ‼︎」

オレは真っ赤になって総悟の胸倉を掴み上げたが、ドSなコイツはオレの反応を見てニヤリとしただけだ。

「少女、漫画、ですか?」

ゆきは目を見開いてオレを見た。
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