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十四郎の恋愛白書 1

第6章 No.6


黒く焦げアフロになった頭を必死に撫で付けるが、元に戻るハズもなく…。
オレは周囲からのチラチラした視線を頭に受けながら、定食屋への道を歩いていた。

総悟の野郎!ゆきに笑われるじゃねぇか…!

一層の事、丸坊主にでもした方がマシかと考えたが、翌日には元に戻っているのがこの漫画なので今日1日我慢することにした。

以前と同じようにゆきの休憩に入る時間。カラリと定食屋の戸を開ける。

「いらっしゃいま…」

テーブルを拭いていたゆきが振り向き、笑顔のまま固まった。
やっぱりこの頭はビックリするよな。

「…よぉ」

オレが仏頂面で挨拶するとゆきはハッと動き出し、慌てて体裁を繕う。

「え⁉︎ あれ、あの、トシさん?ですよね? いらっしゃいませ!」

ゆきはオレの頭をチラチラ見ながらぎこちない笑みを浮かべた。

「…いつもの、頼む」

カウンターの隅にドスンと座ったオレに、ゆきはプルプル震える手で水を出すと自分の腕をつねりながら厨房へと入っていった。

「……… 」
「……… 」

やがて、シャカシャカとマヨネーズを掻き混ぜる音だけが響く。

「……… 」
「どうぞ…」

カウンターテーブルに置かれた久しぶりのゆき製土方スペシャル。しかしこのまま食べても美味くない気がする。ゆきがオレと目を合わせない。

「…おい、笑いたきゃ笑え」
「!」

ゆきはピクリと肩を震わせ、遂に「ぷっ」と噴き出した。

「ぷぷっ、あははは!ト、トシさん、その頭、どう、どうし…!あーっはははは!」

笑い過ぎだろ。

しかしこんなに大笑いしているゆきは初めて見た。いつもニコニコと愛想はいいが、腹を抱えて笑っているのはレアだ。
ゆきはテーブルをドンドン叩いてヒーヒー言ってる。あまりの騒がしさに奥からおばちゃんも出てきて、一緒に大笑いだ。

オレは憮然と2人が笑い終わるのを待っていたが、しばらくしてゆきが目尻に溜まった涙を拭きながら謝った。

「ご、ごめんなさい、トシさん。いつものトシさんのイメージとあまりにも掛け離れていたから、つい…」

笑い過ぎて泣く程だったのか。
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