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十四郎の恋愛白書 1

第5章 No.5


ゆきの家の中を見てみたい衝動に駆られたが、いかんせんもう午前2時を回っている。

「さ、中に入って鍵かけろ。お前が家の鍵を掛けたのを確認してから、オレは帰るから」

最近は自宅前での誘拐事件や、自宅の鍵を開けた途端に家に連れ込まれて乱暴される事件も起きているのだ。
用心に越したことはない。

オレの考えが伝わったのだろう。ゆきは微笑むと、頭を下げた。

「送っていただいてありがとうございます」
「いや、オレがしたくてしたことだから気にすんな。それよりゆっくり休めよ」
「はい…!」

ゆきはカラカラと玄関を開け中に入ってから、こちらに再度頭を下げた。

「トシさん、おやすみなさい」
「あぁ。おやすみ」

ゆきはニコリと微笑むと、ゆっくり引き戸を閉めた。そして、カチリ、と施錠の音。しばらくしてカーテンの引かれた窓がパッと明るくなり、室内に灯りがついたことが伺えた。

オレはその明かりをしばらく見つめてから、夜道を再び歩き出した。

胸の奥がふんわりと優しさに包まれているような気がした。




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