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十四郎の恋愛白書 1

第4章 No.4


「トシさん!」
「やっぱりゆきか!」

今にも泣き出しそうな顔をホッと緩ませた女はゆきだった。
オレはすぐにゆきに駆け寄る。

「怖がらせてすまなかったな。お前はどうしてここに?」
「私、このビルの夜間清掃の仕事もしているんです。今日は本当に真選組のことは聞いてなくて…。ご迷惑かけたみたいで、すみませんでした」

ぺこりと頭を下げた。

「副長、お知り合いですか?」

ゆきに詰問していた隊士は、まさかオレの知人だとは思わなかったのだろう。少し慌てた様子で聞いてきた。

「あぁ。こいつは大丈夫だ。怪しいヤツじゃねぇ」

隊士はオレの言葉を聞くと、即座にゆきに対してピシッと敬礼し、「し、失礼をいたしました!」と頭を下げた。

「あ、いえ、ちょっとビックリしたけど、でも大丈夫です」

オレの顔色をチラチラ伺いながら恐縮する隊士に、ゆきは優しく告げた。

そんなゆきの優しさに隊士は頬を赤らめる。
オレはカチンときて、2人の間に入った。

「ゆき、もうすぐオレ達は隣の廃ビルに討ち入りする。結構大きな捕物だ。危険だから騒ぎが収まるまでこのビルを出ずに、安全な所にいろ。わかったな?」
「討ち入り…? …はい、わかりました」

物騒な内容にゆきは不安そうに瞳を揺らす。廃刀令が為されているこのご時世。一般市民にとって切った張ったは遠い存在だ。

「心配するな。すぐに済む。終わったらオレが家まで送って行ってやるよ」

ゆきを安心させる為に少し微笑み、彼女の髪をくしゃりと混ぜた。
そんなオレにゆきも黒目がちな瞳をホッと緩めて少し微笑んだ。

「はい、待ってますね。トシさん、お気をつけて」

久しぶりのゆきの笑顔に満たされる。
あんなに顔を合わせるのが気まずかったはずなのに、こんな場所ではあるが思いがけず会えたことが嬉しい。
ゆきに会えたことで、グンとモチベーションが上がった。
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