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十四郎の恋愛白書 1

第22章 No.22


たどたどしく礼を言ったオレだが、2人は満足したらしく、嬉しそうに笑った。

そして、「じゃあ、ゆき姉ちゃんにも渡しに行ってくる!」と来た時と同じように慌ただしく出て行った。

チャラリと目の前にキーホルダーをぶら下げてみる。
オレが渡した小遣いで、2人で一生懸命に選んでくれたのだろう。

「しかしまぁ、よく全員の名前があったもんだ」

オレはポケットからパトカーの鍵を出すと、それに『トシくん』キーホルダーを付けたのだった。



翌日、近藤さんは子供達を連れて病院に行った。遊園地で撮ってきた沢山の写真を雪絵さんに見せるのだ。
寺子屋から帰ってきた2人は近藤さんの周りにまとわりつきながら、どちらが助手席に座るか喧嘩しながら出て行った。

小梅と浩太は物心付く前に父親を亡くしていることもあり、懐の深い近藤さんに父親の影を重ねているようだった。
悪童な浩太が近藤さんの前では素直になり、内気な小梅は近藤さんの前では大きな声で笑った。

こうしてゆき達姉弟の存在は、屯所内をにわかに明るくしてくれていた。








それから1ヶ月後、雪絵さんは無事退院することができた。

しかし今後も定期的な検査が必要な為、武州には帰らず、ゆきが元々住んでいた長屋に子供達と3人で暮らすようになった。

小梅と浩太が屯所を出て行く時、二人は泣いていた。

「ううっ、ヒック、総悟兄ちゃんと、離れたくないよぅ」

しゃくりをあげながら言う浩太に、総悟は珍しく眼の端をキラリと光らせて二人を抱き締めた。

しかし真選組は慈善団体ではなく、警察組織だ。保護対象ではなくなった子供達を屯所に住まわせておく事はできない。

「毎日、稽古に来なせぇ。オレみたいに強くなりたいんだろ? 待ってるから」

総悟が震える声で言うと、浩太と小梅は泣きながら何度も頷いた。
隣では近藤さんが号泣していた。


そして雪絵さんが何度も近藤さんに頭を下げ、3人は去っていった。



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