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十四郎の恋愛白書 1

第22章 No.22


浩太とは反対に、小梅は大人しかった。
寺子屋から帰ってきたら、ゆきやおばちゃん達の手伝いを自ら進んでやっていた。
優しく、よく気がつく性格はゆきと同じで、隊士やおばちゃん達みんなから可愛がられていた。

そして2人が父のように慕うのは近藤さんだった。
もともと子供好きな近藤さんは見回りに出かける度に2人に甘味土産を買ってきて、3人で縁側に並んで食べていた。
近藤さんと小梅と浩太、3人仲良く団子を頬張る姿は、まるで武州にいた頃の近藤さんとミツバと総悟を見ているようだった。



「トシィ、ちょっと遊園地行ってくる」

ある日の朝食後、近藤さんがオレの部屋にヒョコリと顔を出した。

「はぁ? 遊園地?」

筆を止めて見遣ると、近藤さんの後ろにはキラキラした目の小梅と浩太がいた。

近藤さんは非番の時は何かと2人を連れて出掛けていた。先週は確か水族館に行ってたな。
武州の田舎に娯楽施設なんてない。2人にとっては江戸はワンダーランドなのだ。

ウキウキソワソワする子供達を見たら「あんた、書類たまってんじゃねーのか⁉︎」なんて言えない。

「あぁ、気を付けてな」

オレは立ち上がると、懐から財布を出して子供達の手に一枚ずつ千円札を置いてやった。

「小遣いだ。これで何か好きな物買ってこい」

途端に子供達は顔を輝かせた。

「ありがとうございます!」
「トシ、ありがとう!」
「ありがとうごぜーやす」

子供達の小さな手の横に、3本目の大きな手が出された。

「…総悟…」

総悟は、ホレ、オレにも小遣いくれ、と言わんばかりに手を差し出してくる。
オレはその手をパチン、と叩いてやった。

「アホか!何でテメェに小遣いやらなきゃならねーんだ!ってかおまえ!なんで私服なんだ!今日は非番じゃねーだろ!」

総悟は近藤さんと同じく袴姿だった。
こいつ絶対一緒に行くつもりだろ。

「固ぇ事言いなさんな、土方さん」

総悟は叩かれた手を摩ると背中のリュックを背負い直した。なんだか良い匂いのするリュックには、おそらく弁当が入ってるんだろう。

総悟は得意げに話し出す。

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