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十四郎の恋愛白書 1

第22章 No.22


「こぉら‼︎ 待ちやがれぇ‼︎」

昼下がり。屯所内の廊下を、総悟と浩太と鬼ごっこする。

笑いながら逃げる2人を追い掛けるオレの唇は真っ赤だ。
最近は総悟のイタズラに浩太が乗っかるようになり、今日は2人でオレのおやつであるキュービーのマヨネーズに唐辛子を混ぜていやがったのだ。

屯所内を走り回り、総悟には撒かれたが浩太はその襟首をむんずと捕まえた。

「うぎゃあ! 鬼に捕まったぁ!はなせぇ!」
「その怖い鬼の大事なマヨネーズにイタズラしたのはどこのどいつだ!」

ヒリヒリする唇で怒鳴る。

「トシ、オレじゃねー!総悟兄ちゃんが誘ってきたんだ!」

浩太は一丁前に、オレのことを『トシ』と呼びやがる。総悟には『兄ちゃん』呼ばわりのくせに。

「アホ!誘われてやったとしても、おまえも同罪だ!」

暴れる浩太を引き摺り、道場まで引っ張っていく。

「総悟兄ちゃんの薄情者ー!」

さっさと逃げた総悟は浩太を助けには来ない。

道場に着くとオレは雑巾とバケツを取り出し、不貞腐れる浩太の前に置いた。

「ほれ。罰として、道場の床拭きだ」
「えぇ⁉︎ こんなに広いのに1人でやるのかよ!」

浩太は道場を見渡し憤慨した。

屯所の道場は、隊士達100人以上が一斉に稽古に励んでもまだ余裕がある程に広い。

「当たり前だ。足腰の鍛錬だと思え。終わったら報告に来い」

オレはそう言い置くと道場を後にする。
後ろでは「トシの鬼!悪魔!」と浩太の罵しる声が聞こえたが、痛くも痒くもない。

そして意外にも根は真面目な浩太は、キチンと最後まで床拭きを終え、オレに報告しに来るのだ。

ガクガクする足腰をさすりながら歩く浩太。その姿を見る限り、これで懲りるかと思いきや、翌日もまたイタズラを仕掛けてくる。そしてまた捕まり、掃除を言い渡される。

お陰で最近屯所内は隅々まで磨かれて綺麗だ。

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