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十四郎の恋愛白書 1

第22章 No.22


こうしてゆき達姉弟が住むようになり、屯所内には新しい風が吹き抜けた。

8時からの朝礼が終わると、元気な声が屯所に響く。

「いってきまーす!」
「総悟兄ちゃん、早くー!」

浩太と小梅の登校時間だ。

ゆき、小梅、浩太は、雪絵さんの入院中、真選組の屯所で生活することになった。
そしてゆきは女中の仕事に就き、小梅と浩太は寺子屋に通っている。

「小梅、浩太、お弁当忘れてるわよ」

ゆきの差し出した弁当を二人は嬉しそうに受け取った。

「気を付けて行けよ」
「総悟、頼んだぞ」

オレと近藤さんも玄関まで見送るのが日課だ。

「あーあ、なんでオレが毎日こんなお子ちゃまに付き添わなくちゃいけないんでさぁ」

面倒臭さそうな体を装っているが、総悟も毎日時間通りに現れる。
相変わらずの天邪鬼さ加減にゆきは頬を緩めた。

総悟は毎朝[朝の見廻り]と称して子供達を寺子屋まで送っていく。いつも年上ばかりに囲まれている総悟を想い、そして見廻りをいつもサボる総悟に対してゆきが考えた作戦だ。

小梅と浩太は「総悟兄ちゃん!」と総悟によく懐き、総悟も満更ではなさそうだ。

「「じゃあいってきまーす!」」
「ふぁ…いってきやーす…」

二人の元気な声と一人のやる気なさ気な声を見送り、オレとゆきは顔を見合わせて笑った。

「総悟くん、真面目にお仕事するようになりましたね」

ゆきの言う通り、総悟はまるでゆきに想いを寄せていた時のように一番隊隊長の仕事をキチンとこなしていた。

「あぁ。朝練もサボらなくなったしな。総悟なりに子供達の手前、プライドがあるんだろう」
「うふふ、そうですね」

小梅、浩太も朝の鍛錬に参加している。
総悟は兄貴分らしく、2人に剣術の指導をしているのだ。

3人の出て行った玄関をもう一度見ながら、ゆきは嬉しそうに微笑んだ。

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