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十四郎の恋愛白書 1

第21章 No.21


「トシの意地悪!!ゆきちゃんの一大事だったのに、なんで教えてくれなかったの?!勲も一緒にゆきちゃんを助けに行きたかった!!」

……子供か!!
ギャイギャイ喚く大将に呆れる。

「とにかく、ゆき達を医療班に診せる。医療班!」

幼児返りしている近藤さんを無視してオレが呼ぶと「ハイ!」と数人の男達が前に進み出た。

「全員診てやってくれ。あとのヤツらは浪士たちの連行と現場検証だ。行け」

オレの声と共に一斉に散る隊士達。すぐに一人の医療班がこちらに来てゆきの母親を抱き取った。
ゆきの母親は「みなさん逞しいのね」とのんびりと言いながらハッチの奥に消えて行く。
浩太が「土方十四郎、カッケェ!」と感嘆の声を挙げながら医療班に連れられて行った。小梅や住職たちもそれに続く。
しかしゆきは不安げに瞳を揺らし、立ち止まっていた。

「トシさん…」
「大丈夫だ。ちゃんといるから」

くしゃりとゆきの頭を撫でながら微笑むと、やっと安心したように頷いてから隊士の後に続いた。

「副長、副長はどうされますか?」

医療班の1人がオレの前で直立する。そういえば総悟に1発殴られて口元が切れていたな。

「オレはいい。擦り傷だからな」

この傷のお陰でまたゆきをこの腕に抱くことができたのだ。総悟に感謝、か…。
頬をさすりながら見遣ると、総悟は珍しく隊長らしく現場検証に付き合っていた。

すると手持ち無沙汰な万事屋が絡んできた。

「多串くーん、今日のコレ、高くつくよー?」

オレの肩に肘をつきながらニヤニヤと笑う。

「何いってやがる。オレとゆきの結婚式の祝儀代わりだと思え。この万年金欠ヤロー」
「え⁉︎何⁉︎ もうプロポーズしちゃったの⁉︎」
「そのうちするんだよ」
「なんだよ、気が早ぇなぁ」
「うるせー。テメェは女の1人もいねぇくせに」
「銀さんはモテすぎて、女を1人に選べないだけですー」
「はっ!減らず口が」
「んだとコノヤロー」

いつもの口喧嘩が始まった。やはりコイツとはソリが合わねぇ。
だが…、

「……」

不意に口を噤んだオレを万事屋は不思議そうに見る。

「ん?多串くん?」
「……万事屋。…サンキュな」

小さな声で言うと万事屋は一瞬面喰らうも、ニカリと笑った。

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