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十四郎の恋愛白書 1

第21章 No.21


少し離れたところでは、ゆきたちの母親が微笑ましく子供たちを見つめていた。
体調が随分悪いのかその顔色は蒼白だが、住職たちの用意した椅子に腰掛けてニコニコと笑っている。

オレは彼女の元まで近づくと、ぺこりと頭を下げた。

「挨拶が遅くなり申し訳ありません。土方十四郎といいます。この度はこの様な事件に巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした」

90度に頭を下げるオレに、ゆきの母親は優しく声を掛けた。

「土方さん、今回の事はもうお気になさらないでください。あなたはちゃんと、私たちを助けてくださったじゃないですか」

オレがゆっくりと頭を上げると、彼女はゆきとよく似た目を弓形に細めた。

「ゆきのこと、よろしくお願いしますね」
「 はい‼︎ 」

ゆきの母親はやはり器の大きな人だった。この人に育てられたからこそ、今のゆきがあるんだろう。

そこへ、ゴウンゴウンと轟音が響き、強風で窓ガラスがガタガタ揺れ出した。
輸送船が来たのだ。

「失礼します」

一言断りを入れてから、ゆきの母親を抱き上げた。船まで運ぶのだ。

「あらあら、頼もしいこと」
「あ! トシさん、大丈夫ですか⁉︎」
「お母さん、ズルい!」

女3人のそれぞれの言葉を浴びながら、母親を横抱きに運ぶ。

みんなで表へ出ると、突風を巻き起こしながら真選組の輸送船が空から舞い降りてきているところだった。

着地しハッチが開くと、隊士を引き連れた近藤さんが降りてくる。屈強な男達を従えて堂々と歩むその姿は、正に真選組局長の名に相応しい勇姿だ。
浩太が「近藤勲だ!カッケェ〜…!」と呟くのに口角が上がる。ウチの大将だからな、と自然と胸を張った。

しかし近藤さんはゆきの姿を見ると、たちまち顔を歪ませた。

「ゆきちゃぁん!おじさん、心配したんだよぉ⁉︎ こんなに酷い怪我させられてぇ‼︎痛かったろうに!可哀想にぃ‼︎」

ゆきを抱き締めてオイオイ泣き出す。号泣だ。

ゆきの母親や妹弟、住職たちは、大泣きする大男にポカンと口を開けて見ていた。

「オイ、近藤さん。一般市民の前だ。あんまり威厳を損なうようなことするな」

見兼ねたオレが言うと、近藤さんは鼻水を飛ばしながら地団駄踏んだ。

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