第21章 No.21
カードではいつもの面々がそれぞれポーズを付けて刀を構えていた。
ゆきが目をキラキラさせてカードを見ている。
「ああっ、トシさんだ!総悟くんに終さんに、原田さんに山崎さん!みんなかっこいい!そしてちょっと若い!」
そういえば、これ発売する時にこんな写真撮ったな。
今見たら超恥ずかしい。
総悟が興味深々にカードを見て、浩太をからかい始めた。
「どのカードが一番強いんでさぁ?」
「そりゃもちろん、沖田総悟だよ!なんてったって戦闘力1500だからね!」
「へぇ。そうですって、土方さん」
「うるせーよ」
ドヤ顔の総悟に腹が立つ。
「でも、土方十四郎も強いんだよ‼︎必殺技の『飛天御剣流 龍槌閃』なんて、すごいんだから!」
いやいや、それ違う漫画だから。オレ、必殺技なんて持ってないから。
「浩太、オレの必殺技はなんていう名前なんでぇ」
「ちょっと浩太くん?伝説の攘夷志士カードとかってないわけ⁉︎」
総悟と万事屋が浩太を囲む。3人で頭を突き合わせてカード談義が始まった。
窓から差し込む夕陽が3人の重なった影を長く引っ張る。
ゆきはそれを優しく見守っていた。
そこへ、またもやチョイチョイと引っ張られた。見ると次は妹だ。歳は確か13歳。
「小梅、どうしたの?」
ゆきに小梅と呼ばれた少女は、こちらもゆきそっくりの可愛らしい少女だった。眉毛の上で切り揃えられた前髪に、両耳の後ろから下げられた長い三つ編み。
小梅は頬を赤く染めながら、小さな声でオレに言った。
「あの、私も握手してもらってもいいですか?土方さんのファンなんです」
オレはゆきをチラリと見遣る。浩太と違ってこちらは明らかに“異性”として憧れている、といった感じだったからだ。
ゆきが苦笑しながらも頷いたので、オレは手を差し出した。
「よろしくな」
そう言ってゆきよりも少し小さな手を握ってやると、小梅はボン!と夕陽よりも真っ赤になった。
「は、は、はいい! よ、よろしくお願いしますぅ!」
小梅は両手でオレの手を握り、ブンブン振った。赤くなる様子が出会った頃のゆきを想わせる。
「ちょっとちょっと小梅、振りすぎ!」
ゆきが止めに入ると小梅はハッと慌てて手を離し、更に赤く頬を染めた。