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十四郎の恋愛白書 1

第21章 No.21


総悟と万事屋と3人で志士たちを縄で縛り上げる。全部で15人いた。
ゆきの幼馴染の男もその中にいた。どうやらオレに一番最後に切りかかってきた浪士らしい。
ゆきは複雑な表情で地に伏す男を見つめていた。

浪士たちは全員気絶しているが、念のため全員の縄を繋げておく。万が一意識を取り戻したとしても逃げ出せないようにだ。
もう少ししたら真選組の船が到着するだろう。

ひと段落した時、ゆきの弟が興奮気味に訴えてきた。なんと驚いたことに、志士たちの中の3人はゆきが倒していたというのだ。

「姉ちゃん、凄かったんだぜ!あっという間に男3人を叩きのめしちゃったんだ!」
「以前、屯所でお世話になっていた時近藤さんから稽古を付けて頂いてましたし、その時はトシさんの身体でしたからすごく良く感覚が掴めて」

弟の頭を撫でてからゆきははにかんで笑う。

「元に戻ってからもトシさんが毎日私の身体を鍛えてくれていたお陰で、剣の感覚が掴みやすかったです。トシさんには内緒で毎日筋トレと素振りはしてたんですよ」

驚いた。毎日手を繋いでいたのに気が付かなかった。
ゆきの掌を見ると確かに以前ほどの柔らかさはなく、剣だこやマメはなかったが、皮が硬くなっていた。

女一人、木刀片手に攘夷志士の中に討ち入りするとは、その心意気には感服する。しかしこんな危ない目をさせるのは金輪際ごめんだ。

「ゆき、もうこんな無茶はしないでくれよな」

掌を優しく撫でると、ゆきは嬉しそうに微笑んだ。

そこへチョイチョイと上着が引っ張られる。

振り返ると先ほどの弟がオレを見上げていた。年は10歳だったか。ゆきに良く似た黒目がちな瞳だが、その上にある意思の強そうな眉と短く刈った黒髪のお陰で、勝気な悪童という印象だ。

「なぁ、にいちゃん、もしかして、土方十四郎?」

眉を顰めて聞かれた。ゆきが慌てて嗜める。

「こら!浩太!なんていう口の利き方をするの!」

どうやらこの悪童は浩太という名前らしい。
そういえば、名前を名乗っていなかったな。
しかし、オレの悪名はこんな片田舎にまで知れ渡っているのか。

「そうだが、それがどうした?」

オレが苦笑しながら答えると浩太は驚いた顔をしてから、「キャッホー!本物だ!」と飛び上がった。

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