第20章 No.20
オレはゆきの母親に頷くと、ゆっくりと、そして力強く、ゆきを抱き締めた。
途端にゆきは泣き声を挙げながら、オレにしがみついた。
「ゆき、ゆき…!」
愛しい名を何度も呼び、その小さな身体を掻き抱いた。
こんなオレでもこの幸せを掴んでもいいのだろうか。この命より大切な女を護っていけるのだろうか…。
答えは出ない。
それでも、
「ゆき、もう離さねえ…!」
「トシさん…!」
隊服に縋る白い手がふるりと震え、その頬をオレの胸に擦り寄せた。
ゆきをもう手放したくない。ずっとゆきのそばにいたい。
そう、心から強く願う。
窓から差し込む薄いオレンジ色の光が真っ直ぐに行く先を照らし、オレたちを見守ってくれている気がした。