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十四郎の恋愛白書 1

第18章 No.18


「せっかく土方コノヤローとくっ付けたのに。なんで真選組に来るように説得しなかったんでさぁ」
「ゆきは定食屋のおばちゃんに深い恩義があるんだとよ。だから店を辞めたくないらしい。それからおまえがオレ達をくっ付けたみたいな言い方すんな」

しかし総悟は刀を仕舞うと、片眉を上げてオレを見る。

「オレのお陰でゆきさんと付き合えるようになったんですぜ」

……は?

「おい、どういうことだ?」

総悟はニヤリと笑う。

「あんたが屯所でグズグズ引き篭もってる間、オレぁ毎日定食屋に通ってやした。それでゆきさんにあんたがどれだけ情けない男か、ない事ない事、こんこんと言って聞かせたんでさぁ」

ない事ばっかじゃねーか!

「ゆきさんは母性本能が強く懐の深いお人だ。男に護ってもらうよりは、男を支えてあげたいっていうタイプだと思ったんでさぁ。だから『頼りになる副長』のあんたより、『惚れた女がいないと何も出来ないダメな男』のあんたをアピールしておきやした」

な、なんだと⁉︎

「案の定、ゆきさんは土方さんが心配で堪らなくなったみたいで。そこにあんたが毒にやられて意識不明の重体ときた。連絡したら飛んで来やしたよ」

……なんて事だ!

総悟の手の平で躍らされていたのだと初めて気付く。

しかもゆきの中でオレは一体どんだけ情けない男になってるんだ!そりゃ『護ってあげたい』とか言われるわ!

ガクリと項垂れるオレに、総悟はあっけらかんと言い放つ。

「でも、それで無事にゆきさんを手に入れられたんだから良かったじゃねぇですかぃ。実際、ゆきさんがいねぇとあんた、全くダメダメだったし」

うるせーな。その通りだけど。

「それに…、オレは、あんたの隣に並ぶゆきさんの顔が好きでさぁ」
「?」

総悟を見遣ると、今までになく柔らかい表情でゆきを見ていた。

「土方さん、命より大事な女なんでしょう?せっかくここまでお膳立てしてやったんだ。もう離すんじゃねぇですぜ。そして早く『姐さん』として真選組に迎え入れてくだせぇ」
「…総悟…」

穏やかに言う総悟。
いつも反抗ばかりしてくる生意気な弟分の、珍しく暖かい言葉にオレはしばし感動した。

「あぁ、約束する」
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