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十四郎の恋愛白書 1

第18章 No.18


冷たい北風が羽織の裾をはためかせて過ぎていく。オレはぶるりと身体を震わせ、マフラーに口元を埋めた。

午前2時。夜の街は未だ光り輝き、瞬く星空をなんとか霞めようとしているかのようだった。

ふとビルから人の気配。

「トシさん、お待たせしました!」

やってきた、オレの温もり。

「いや、そんなに待ってねぇ」

息を切らせ寒さで頬を赤らめたゆきの手をキュッと繋ぐ。小さな手に愛しさが込み上げる。

「行くか」
「はい!」

もう今は、自然と恋人繋ぎだ。







ゆきと付き合うことになった。

退院したその日、屯所ではオレの退院祝いではなく、何故かゆきの歓迎会が催された。

『おかえりなさい ゆきさん』

そう横断幕に書かれた文字を見てゆきと2人呆気に取られる。

「いや、何なんだよ、これは⁉︎」
「何って、ゆきさんの歓迎会でさぁ」

ピンク色の三角帽子を被り、片手にはクラッカーを持つ総悟がしれっと答えた。似合っているのが腹立つ。

「いやいや、そこはオレの退院祝いをするとこじゃねーの⁉︎ 一ケ月ぶりに副長が帰ってきたんだぞ⁉︎ なんでゆきに『おかえりなさい』なんだよ!」
「仕方ねーでさぁ。土方さんよりゆきさんの方がみんなから好かれてるんだから」

当然のように言われた。

……オレ、真選組やめようかな。

部屋の隅で落ち込むオレを他所に、ゆきを囲って歓迎会が始まった。



しかし、総悟や隊士達の思惑とは少し違ったようだ。

「えぇーー‼︎ ゆきさん、また真選組で働いてくれるんじゃないんですか⁉︎」

隊士の声が大広間に響く。

「はい。あの、今まで通り定食屋とビルの清掃を続けて行こうかと…」

ゆきの言葉に一斉に起きるブーイング。

なるほど、オレとゆきが付き合い出したら、ゆきがまた屯所に戻って来ると勘違いしてたのか。

「…どういうことでぃ。土方コノヤロー」

隅で1人酒をチビチビ飲んでいたオレの首筋に、チャキ、と真剣が充てられた。

「どうもこうも、ゆきがそう決めたんなら仕方ねーだろ」

箸で摘まんで刃を除ける。総悟は盛大に舌打ちした。


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