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十四郎の恋愛白書 1

第17章 No.17


「あんな?裸の写真や、さっきの四つん這いの写真ですか?でも、あれもいいんじゃないですか?」

はい?

「あの写真、中身は私ですけどすごくトシさん可愛く写ってるし、ちょっとエッチだけどとても綺麗ですよ」

事も無げに言ったゆきを、オレはポカンと見上げた。

「綺麗…?」

ゆきはオレの頭をよしよしと撫でる。

「はい、綺麗です。だからもう気にしなくて大丈夫ですよ」

そう言って黒い瞳をくしゃりと弓形にした。

近藤さんはじめ隊長達が、鬼の副長の頭を撫でるゆきに慄いているが、それどころではない。
ゆきの美的センスや感性っておかしくね?とかも今はどうでもいい。


……天使か‼︎


ゆきの一言で、写真集への羞恥が瞬く間に消えて行く。なんでもなかった事かのように思えてくる。

呆然とゆきを見上げるオレの隣で、総悟が刀を拾い上げた。

「やっぱりゆきさんの感覚はズレてまさぁ」

総悟が膨らませた風船ガムがパン、と弾けた。







「じゃあ、そろそろ帰りますね」

夜、病室のカーテンを閉め終えたゆきは「良い子にしてるんですよ」とオレの頭を撫でた。
屈んで目線を合わせて撫でるその様はまるきり子供に対する態度だが、ゆきにされると心地良かった。目を細めてその手を受け容れる。

しかしカバンを持って立ち上がったゆきの手を咄嗟に引き留めた。

明日は? 明日も来てくれるか?

口には出せない。
躊躇いながら見上げるオレに、ゆきは穏やかに笑う。

「そんな顔しないでください。明日も必ず来ますから、大丈夫ですよ」

そう言ってまたフワリとオレの頭を撫でた。ゆきの触れる箇所から全身に安堵が広がる。

「ああ、待ってる」

ホッとして手を離すと、ゆきは優しく「おやすみなさい」と言って病室を後にした。

それから毎日ゆきは病室に来てくれた。定食屋とビル清掃の仕事の合間の短時間ではあるが、オレはその毎日の面会を楽しみにしていた。


オレはあの時ゆきの腕の中で気を失ってから、再び生死の境を彷徨ったらしい。絶対安静の中病院を飛び出した上かなりの無理をしたから当然だ。
その間、なんとゆきはずっと付きっ切りで看病してくれていたそうだ。

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