第17章 No.17
総悟はたちまちシュンとなる。
「はい、ごめんなさい。ゆきさん」
ほんとおまえ、一回殴らせろ。300円あげるから。
「それで近藤さん、万事屋はどうなったんだ?」
「ああ、万事屋はな…」
近藤さんは顎髭を撫でながら話し出した。
万事屋はあれから2日間、薬が抜けるまで屯所の地下牢に監禁されていたそうだ。正気に戻ってからも記憶が残っていたらしく、自殺しかねないくらい落ち込んでいたらしい。ザマァみやがれ。
「2日間、地下から『十四郎〜!好きだ〜!十四郎〜!』って声が響いてて、気持ち悪かったでさぁ」
いらないコメントをする総悟は無視する。
しかし警察組織を壊滅させたにもかかわらず、無罪放免だ。まぁ、木刀で戦う万事屋のお陰で死者は出なかったし、元はと言えば総悟が薬を盛ったのが原因の上、違法の薬だったらしい。
総悟も半年の減給処分を受けた。流石に総悟に甘い近藤さんも、屯所があれだけの惨状になれば庇いきれなかったのだろう。
「おまえもこれに懲りて、悪戯はほどほどにしろよ」
…オレが言った小言も無視された。
白夜叉によって破壊された屯所は、現在改修工事の真っ最中らしい。本来ならそんな資金はないのだが、オレの写真集の印税がかなり入ってきていたらしくなんとかなったのだ、と近藤さんが上機嫌で話した。
「ほんと、トシ様様だよ!あの写真集、バカ売れでさぁ!他にもグッズ販売の話も出てきて、これからもっと収入が…」
「はあ⁉︎ グッズだと⁉︎ 」
寝耳に水、晴天の霹靂だ。
この上更にグッズだと⁉︎
「もちろん断ったんだろうな⁉︎」
これ以上世間様に恥を晒してたまるか‼︎
しかし近藤さんは視線を彷徨わせてしどろもどろだ。
「あ、あの、トシ、その…」
「いや、昨日契約してやしたぜ」
「なんだとぉぉ⁉︎」
総悟の一言にキレる。
前言撤回。
この人に付いて行くのはやめだ。
総悟がすかさず刀をオレに差し出してきたので、遠慮なくそれを引っ掴む。
「原田…近藤さんを前に出せ」
殺気が陽炎のように舞い上がる中、オレはスラリと抜刀した。
原田の後ろにコソコソ隠れる近藤さんは涙目だが、泣きたいのはこっちだ。
「いや、ごめんトシ‼︎ 断るから!契約破棄するから‼︎」
「たりめーだ‼︎ オレの黒歴史に新たな1ページを刻むつもりか‼︎」