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十四郎の恋愛白書 1

第17章 No.17


目を覚ますと、白い天井。
自分が酸素マスクや点滴に繋がれているのを見て、ここが病院なのだと認識する。
何度目かのデジャブだ。

ふと、視界の端に人の気配を感じた。
また銀色の綿毛がウロついているのかとそちらを見遣るが、それは銀色ではなく……。

「あ、目が覚めました?」

豊かな黒髪を揺らして振り返ったのは、ゆきだった。

「ゆき…?なんで…」

一瞬呆然とし状況が掴めなかったが、すぐに銀髪に襲われたことを思い出す。

そうか。オレはあの時、ゆきに助けたられたのか…。

「トシさん、三日間眠ってたんですよ」

ぼんやりと見上げるオレの髪をゆきはサラリと撫でた。
そして「お医者さん呼んできますね」と部屋を出て行った。





武装警察真選組を一人で壊滅させた伝説の攘夷志士を見事撃退したのは、一般市民のゆきだった。

総悟から連絡を受けて竹刀片手に家を飛び出してきたゆき。屯所に入ってすぐにオレが万事屋に押し倒されているのを見つけて、思わず手に持つ竹刀で万事屋の頭を撃ってしまったらしい。

「もう、びっくりしました。銀さんとトシさんがキスしてるんですもの」
「そんなところから見てたのかよ」

医師の診察の後、憮然とするオレの前でゆきはコロコロと笑う。
おっさん同士のラブシーンを見たにもかかわらず、ゆきには然程ダメージはなさそうだ。オレにとっては2度と思い出したくないトラウマ確定の出来事だが。

万事屋が倒れて、驚いて見上げた先にゆきが立っていたのは信じられなかった。
あの万事屋がゆきの力で、しかも竹刀の一撃で気絶するとは思えない。やはり幻覚剤はある程度効いていたのだろう。

それにしても、オレの為に深夜に女一人、息急き切って駆け付けてくれたのか…。

なんとも言えない嬉しさが込み上げてくる。

歴戦の猛者である真選組の隊士たちが次々と倒れていく中、結局オレを救ってくれたのはゆきだったのだ。
あの時ゆきが来てくれていなかったらと思うと、今でもゾッとする。

「ゆき、助けてくれてありがとうな」

はにかみながら礼を言うと、真選組副長を救った女神は嬉しそうに笑った。

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