第16章 No.16
「近藤さん!どこ行くんだ!」
腹の傷を気遣ってくれているのだろう、オレを横抱きに抱えて走る。
「屯所を出る!」
廊下に死屍累々と横たわる隊士達の横を潜り抜けると、目前に破壊された玄関が見えた。
しかし、その前には白煙を纏った白夜叉がいた。
「 ‼︎ 」
「万事屋‼︎ 」
なんてヤツだ‼︎
「ゴ〜リ〜ラ〜! オレの十四郎をお姫様抱っこするなんて、許さん〜‼︎」
色々ツッコミ所満載のセリフを吐きながら、木刀を振り上げて万事屋が飛び掛ってきた。
近藤さんは寸でのところで避けるが、床を粉砕した木刀の勢いに、二人吹き飛ばされる。
「ぐぁ!」
床に叩き付けられ、腹の痛みに身悶えた。
「トシ!」
「十四郎!」
ギィン!
近藤さんと万事屋の剣が交わる。
「万事屋‼︎ トシは今重体なんだ‼︎ 絶対安静なんだよ‼︎ バカなことしてねぇで、引け!」
「うるせー!十四郎はオレのモンだ‼︎ テメェこそ、その薄汚ぇ手で十四郎に触るんじゃねぇ‼︎」
バチッ!と近藤さんが吹き飛ばされる。しかし床を転がり直ぐに体勢を立て直した。
「近藤さん…!」
傍に転がる隊士の刀を握り締め立ち上がろうとしたが、腹の痛みの上に足に力が入らず上手く立てない。
その時万事屋が懐に手を入れてニヤリ、と笑った。
「ゴリラぁ、“とっておき”をやるよぉ」
そしてバッと数枚の紙を空中に撒き散らしたのだ。
「お妙の入浴写真だぁーー‼︎」
「なんだとぉーー‼︎」
近藤さんは即座に刀を放り出して写真に向かって飛び上がった。
「隙アリィーー‼︎」
ドゴォ‼︎
見事吹っ飛ばされた真選組局長。
派手に壁をブチ抜いて隣室で白目を剥いた。
「……!」
あまりにもお約束な近藤さんのやられ具合にしばし呆然とする。
テメェら、打ち合わせしてたんじゃねーだろうな⁉︎
「十四郎、これで、オレ達二人きりだ」
万事屋が木刀を片手にゆらり、と近付いてきた。
「…っ、来るな!」
手に持つ刀を震える手で必死で構える。
「そんな物騒なモン、持つんじゃねーよ」
万事屋はいとも簡単にオレの手から刀を叩き落とした。静まり返った廊下にカランと乾いた音が響く。
「……‼︎」
後ずさるがすぐに背が壁に当たる。
絶対絶命…!