第16章 No.16
途端に総悟は大広間を飛び出して行った。
「…………………」
残されたのは、唖然とする隊長達とオレと近藤さん。
1番隊隊長、戦わずして、戦線離脱。
総悟が去った大広間は騒然としていた。真選組1番の使い手を失ったのだ。
正直、あの万事屋に太刀打ちできるのは総悟くらいだ。それがまさかの戦線離脱。
「ト、トシ。安心しろ。総悟がいなくても、オレ達でなんとかする。きっとおまえを護ってみせるぞ!」
真っ青になるオレに近藤さんは冷や汗をかきながら励ました。
しかし、その瞬間に大広間の襖が吹き飛ぶ。
ドゴォ!
「見ぃ〜付けたぁ〜〜〜」
粉塵の中に、身に闘気を纏った白夜叉が立っていた。
「……‼︎」
信じられねぇ!
この短時間で100人以上の隊士達を打ち倒して来たというのか…!
オレは愕然として万事屋を見た。
万事屋はそんなオレに視線を向けると、その鋭い瞳をヘニャリと緩ませた。
「待たせなぁ、マイハニー」
「 ‼︎ 」
ゾワッ!
一気に鳥肌が全身を覆う。
万事屋が一歩此方へと踏み出し、ニヤリと笑った。
「総一郎くんが見当たらねぇな。あのケーキ食ったのかな?」
テメェか‼︎
うちの筆頭剣士に何してくれてんだ!
万事屋はオレに向かい手を差し伸べる。
「土方、いや、十四郎。オレと一緒に行こう」
「…っ!」
ゾワワッ!!
まさか万事屋に名前呼びされる日が来るとは思わなかった。もう鳥肌立ち過ぎて皮膚が痛い。
オレは顔を引き攣らせてブンブンと首を横に振る。しかし万事屋はニコリと優しく微笑んだ。
「十四郎は恥ずかしがり屋さんだなぁ」
恥ずかしがってねー‼︎ 気持ち悪がってんだよ‼︎
万事屋が此方へまた一歩踏み出す。
途端に数人の隊長達が飛び出して斬りかかった。
ドカッ!
一太刀で吹き飛ばされた。
「…‼︎」
歴戦の猛者である真選組隊長たちを、こうも呆気なく薙ぎ倒すとは…!
圧倒的な強さと肌を刺す威圧感に『白夜叉』の名を思い知らされる。
「トシ!」
近藤さんがオレの腕から点滴を引き抜き、オレを抱えて走り出した。
「待ちやがれ!」
すぐに万事屋も走り出すが、3番隊隊長がその前に躍り出る。
「終!頼んだぞ!」
近藤さんが大広間を出ると、その出口を塞ぐように原田が立ちはだかるのが見えた。