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十四郎の恋愛白書 1

第16章 No.16


焦って万事屋を見るが、虚ろな顔でオレを見たままピクリとも動かない。

「⁉︎」

様子が変だ。しかしとりあえずジュースを何とかしなければならない。オレはベッド脇のナースコールを取ろうと手を伸ばした。
その時、ガシッ!と腕を掴まれる。

「えっ…⁉︎」

万事屋がオレの腕を掴んでいた。

「お、おい、どうし…」
「土方…、好きだ…」

囁きとともに抱き締められた。


〜〜〜〜⁉︎‼︎


あまりの衝撃に気を失いそうになる。

しばらく放心状態だったが、オレを強く抱き締めてくる万事屋にどうやら冗談ではないのだと気付く。

「お、おい!やめろ、離せ!」

万事屋の腕の中で暴れるが、所詮病人の力だ。ビクともしない。

「万事屋、正気に戻れ!」

傷口も痛いが鳥肌も凄い。
首筋にかかる万事屋の息に、悪寒で身体が指の先まで強張った。
突然の意味不明なこの状況。きっとさっきのジュースが原因に違いない…!

「土方…」

オレを見つめてくる万事屋の目は完全に熱に侵されていた。
両手で頬を固定される。

「ひぃ‼︎」

傾いて近づいてくる万事屋の顔に、全身の毛が総毛立つ。

「や、やめっ…!」

もう駄目だ…!!
そう目をギュッと瞑った時、

ゴン‼︎

「ぐは!」

唐突に万事屋が沈んだ。
ハッと見ると、そこには鞘に収めたままの刀を手に持つ総悟がいた。

「そ、総悟⁉︎」
「流石土方さんでさぁ。万事屋の旦那でさえも虜にしちまうとは」
「ちげーよ!万事屋が冷蔵庫の中のジュースを飲んだ途端…!」

そこまで言って気付く。
万事屋は【飲んでいいですって書いてある】と言った。

こいつか……!!

「テメェが何かジュースに仕込んだんだろ!」

総悟を問い質すが、総悟はケロリと白状した。

「ゆきさんに飲ませるつもりだったんでさぁ」
「はあ⁉︎ ゆきに⁉︎」

何でそこにゆきが出て来るんだ!

「あのジュースには惚れ薬が入ってやす。あれを飲んで一番最初に見た人間を好きになるんでさぁ」
「惚れ薬だと⁉︎」
「へい、土方さんのファンからのプレゼントの中身の1つです。面白そうだからくすねておきやした」

事も無げに言った総悟は、黄色いペットボトルを拾い上げた。

「ゆきさんに飲ませて土方さんを見せりゃあ、二人がくっ付くと思ったんでさぁ」
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