桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第11章 B
潤の話では、大野先輩が留学を決めたのは、大野先輩自身の考えではなくて、留学するよう強引に薦められたからだそうで…
その強引に薦めてきたのは、他でもない、翔さんのお父さんで…
一度は断ろうとした大野先輩に、留学費用から、向こうでの滞在費に至るまで、全てにおいて援助をするという条件を提示してきたらしい。
そこまでされると、元々本格的に絵の勉強をしたかった大野先輩も、流石に首を縦に振るしかなくて…
結局二年だけ、という約束の下、留学を決めた。
でも二年経っても大野先輩が帰国を許されることはなく、そこで大野先輩は気付いたんだ。
翔さんと別れさせるための、体のいい口実だった、ってことに…
「じゃあ、何? 翔さんは大野先輩に振られたわけじゃない、ってこと?」
だとしたらどうして、大野先輩は翔さんの元に帰って来ない?
「まあな…、そうなるかな?」
潤らしくない、歯切れの悪い、歯に物が詰まったような言い方だ。
「帰って来れない事情が出来た、ってこと?」
それしか考えられない。
「向こうに新しい恋人でも出来たとか?」
もしそうなら、今だに大野先輩が帰国しないのも、納得が行く。
「うん、そんなところだな」
潤が自販機に小銭を放り込み、ボタンを一つ押した。
ガコンと音を立てて落ちてきたペットボトルを取り出すと、それを一気に煽った。