桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第11章 B
突然駆けだした翔さんに後れを取らない様に、俺もその後を小走りで着いて行く。
そして公園に一歩足を踏み入れた瞬間、翔さんの足がピタリと止まった。
「翔さん…?」
満開の桜を見上げる翔さんの目には、涙が浮かんでいた。
「どうしたの、急に走り出したりして…」
後から追い着いてきたニノが、少しだけ息を切らせながら言う。
「分かんない。けど、”桜”に何か思い出があるのかもしれない」
そうじゃなきゃ、こんなにも静かに涙を流したりはしないだろうから…
「翔さん疲れたでしょ? 少し座ろうか?」
涙で濡れた頬をタオルで拭いてやり、肩を抱いてベンチに座らせた。
それでも翔さんの涙は止まることはなく、俺は小刻みに震える背中を摩り、膝の上で硬く結んだ両手を握った。
翔さんと暮らし始めて、もうすぐ三か月が経とうとしているけど、駄々をこねて泣くことはあっても、こんなことは初めてかもしれない。
「どうしちゃったんだろ…」
思ってもなかった状況に、正直戸惑うばかりで…
一体どうしたらこの涙を止めてやることが出来るんだろう…
そんなことばかりを考えていた。
「雅紀、ちょっといいか?」
少し離れた場所からその光景を見ていた潤が、俺を呼んだ。
「すぐ戻るからね?」
俺は翔さんの髪を撫でそう言うと、ニノに任せてベンチを離れた。