桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第11章 B
翔さんは全く恥じらう様子もなく、俺の前に自身を晒す。
最初こそ、俺も凝視するのを躊躇ったが、今ではもうそんなことも言ってられない。
翔さんの足に紙パンツを通し、腰まで引き上げると、今度はデニムのジーパンを穿かせてやった。
元々は俺のお気に入りだったけど、いつの間にか翔さんのお気に入りになっているジーパンだ。
「行こうか?」
一通り着替えが済ませ、手を引いてやると、翔さんが小首を傾げて俺を見上げた。
もう…、忘れてるんだよね…?
「散歩、行こ?」
ほんの数分前に言った言葉を、もう一度繰り返す。
すると、嬉しそうに頬を緩ませて、翔さんが小さく頷いた。
翔さんの手を引き玄関へ向かうと、裸足のまま外へ出ようとする翔さんを上り端に座らせ、靴を履かせてやる。
外に行く時は靴を履く…
当たり前のことが、今の翔さんには当たり前じゃなくて…
この瞬間がいつも悲しくなる。
「お待たせ。行こうか?」
外で待っていた二人に声をかける。
「そうだな…。近くに公園、あったよな?」
「ああ、ありますね」
確かにアパートの裏に、小さな公園がある。
「桜が丁度今見頃ですよ?」
「じゃあ、そこ行くか?」
先を歩き始めた二人の後を、俺は翔さんの手を引いて着いて行った。