桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第10章 I.
翔さんのことはニノに任せて、俺は階下へと降りた。
「あの…、坊ちゃんは…」
丁度階段を降り切った所で、待ち構えたようにお手伝いさんが俺に向かって駆け寄ってきた。
「今眠ってます。あの…、翔さんのご両親は…」
俺の言葉に少しだけ安心したのか、お手伝いさんが”どうぞ”と言って先を歩き出した。
通されたのはさっきと同じ部屋。
そこで翔さんのお母さんは落ち着かない様子で、立っては座り、また立っては座りを繰り返していた。
お父さんは相変わらず険しい顔で、今度は小難しそうな本のページを捲っていた。
「あ、あの…、お話しても大丈夫ですか?」
「え、えぇ、そうね…、聞かせて頂戴?」
お母さんがソファーに座ったまま、身体を少しだけ俺の方に向けた。
お父さんは…やっぱり相変わらずだけど…
「実は、翔さん今俺ん家にいるんです。たまたま見かけて、様子がおかしかったんで、そのまま…」
「まあ、そうだったの…。それはお世話になったわね?」
お母さんの顔が少しだけ綻ぶ。
翔さんに似た優しい笑顔に、心苦しさが込み上げてくる。
きっと悲しむんだろうな…
泣かれちゃったりしたら、俺…どうしたらいいんだろう…
でも話さなきゃ。
ちゃんと今の翔さんの状態を、話さなきゃ…
俺は膝の上で拳をキュッと握った。