桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第10章 I.
「翔さん寝た?」
ノックも無しに開いた扉の隙間から、ニノが顔を出す。
「ああ、今さっきね」
「そっか…。それにしても驚いたよね…」
声を潜め、なるべく足音を立てないように、ゆっくりとニノが近づいてくる。
「確かにね…。俺もまさかと思ったよ…」
でもこれが現実なんだ。
そして始まり…
「あのさ、下の様子は? 翔さんのご両親はどうしてる?」
あの様子だと、翔さんのお母さんは、相当ショックを受けてる筈だ。
「まあ、おばさんはずっと泣いてるよ…」
そりゃそうだろうな…
ずっとエリート路線まっしぐらだった息子の、あんな姿見たら、平気でいられないよな…
「でもおじさんはかなり疑ってる…と思う…」
「疑う? って何を…?」
「だからさ、翔さん会社も辞めちゃったじゃない? 当然金も無いわけよ。だからさ、俺らを使って、それこそ金の無心に来たんじゃないか、ってさ…」
「…っだよ、それ…」
いくらなんだってそんなの酷すぎる…
俺は怒りが押さえられず、翔さんの指に絡めた自分の指を解くと、勢い良く立ち上がった。
「悪いけど、ちょっと翔さん見ててくんない? 俺、話してくるから…」
で、翔さんの病気のこと、ちゃんと理解して貰うんだ。
コレは嘘や芝居なんかじゃない、現実なんだってこと、分かって貰うんだ。