桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第10章 I.
「自分で出来るから…」
そう言った翔さんを無視して、俺は翔さんの濡れたズボンと下着をずり下げると、そこに少し熱めのシャワーをかけた。
恥ずかしさなんて、俺にはなかった。
ただこんな姿の翔さんを見ているが、辛かった。
「よし、これでさっぱりしたでしょ?」
バスタオルで濡れた足を拭き、ベッドの上に用意してあった下着とズボンを着せ付けると、俺は翔さんをベッドに横たえた。
「…すまない。お前にこんなこと…」
翔さんが申し訳なさそうに、瞼を伏せる。
「もう、さっきからそればっかですよ? 謝んなくていいですから。それよりさ、ちょっと疲れたでしょ?」
きっと相当なショックを受けたんだよね?
翔さんの顔はまるで色を失くしていて…
「俺、翔さんが眠るまでここにいますから、ちょっと休んで下さい」
少しでも不安を取り除いてやりたくて、その髪をそっと撫でながら言う。
次第に翔さんの瞼がどんどん下がって行き、そして聞こえてきた規則的な寝息…
今は…
今だけはゆっくり眠って欲しい。
そして目が覚めた時、この現実を忘れていて欲しい…
俺はそう願いながら、力なく投げ出された翔さんの手を握った。
冷えた指先に、少しでも俺の体温を分けて上げたくて…
俺が付いてるから…