桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第10章 I.
俺の襟元を掴んだ手をそっと解いてやる。
小刻みに震える指先が、それが翔さんに与えたショックの大きさを物語っているような気がした。
「大丈夫。俺がついてるから、ね? ほら、捕まって?」
翔さんの腕を俺の肩に巻き付け、胸に引き寄せてやる。
「あの、翔さんの部屋は…」
お手伝いさんを振り返り、訪ねると、お手伝いさんが慌てたように階段を指差した。
「あ、は、はい、こちらです…」
翔さんを抱き上げる。
お手伝いさんの案内で階段を、翔さんの部屋へ向かって昇って行く。
その間も、ずっと翔さんは目を涙で潤ませたまま、俺を不安げに見上げていた。
「こちらです」
殆ど使われていないと言われたその部屋は、キチンと掃除が行き届いていて…
「あの…、宜しければシャワールームがこちらに…」
流石金持ち、と言うべきだろうか…
俺のアパートよりも広い部屋には、専用のシャワールームまで完備されてて、俺はそこを遠慮なく使わせてもらうことにした。
「お着替え、用意しておきますので」
「ありがとうございます。後は俺やりますんで…」
お手伝いさんに軽く頭を下げ、翔さんを抱いたままシャワールームに入った。