桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第7章 I
「ここは…高校…? 俺の通ってた…」
後部座席の窓を開け、窓の外に顔を出した俺を見て、二人が顔を見合わせる。
どうしてこんな場所に…?
何がどうなっているのか分からない俺は、顔を車の中に戻すと、隣に座る雅紀の顔を見た。
「あの…実は…」
「ドライブ、ですよ。翔さんが言ったんですよ? 毎日仕事ばっかりで、たまには息抜きしたい、って言ったの。ね、相葉さん?」
「えっ、あ…うん」
何かを言いかけた雅紀に、二宮が被せるように言って、それに大きく頷く雅紀。
俺が一体いつ…?
そう聞き返したかった。
でも、ここ最近詰め込み過ぎた仕事のせいか、時折記憶が曖昧になることもあることを考えれば、もしかしたら…なんて思いもないわけではない。
だとしたら、二人の言ってることは、その場凌ぎの“嘘”なんかではないのかもしれない。
それに何より、雅紀は高校時代、唯一目をかけていた後輩だ。
信頼性に値する奴だ、ってことは俺も十分理解している。
きっとそうだ。
俺が言い出したんだ…。
「そう…だったな。俺が誘ったんだよな…」
「そうですよ? 私なんて、仕事ほっぽり出して来たんですからね?」
二宮が俺に向かって唇を尖らせて見せる。
「ああ、それは済まなかったね、付き合わせてしまって…」
「いいえ、とんでもないです。だってほら、先輩の言う事は絶対でしょ? 逆らえませんよ」
そう言って二宮は、おどけた様子で笑った。