桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第7章 I
「ここに出した物、言って貰えますか?」
俺が椅子に座るのを見はかっらったように、メガネの男がテーブルを指さし言う。
何を言っているんだろう…
首を傾げる俺に、レンズのむこう側の目が細められる。
「どうしました?」
俺の答えをせ急かしているわけではない。
それはその口調からも読み取れる。
でも、俺にはこの男の”意図”が分からない。
何のために、この男はこんなことをしているんだろう…
分からない…
俺に何を求めている…?
心の中で湧き上がってくる不安が、膝の上で固く結んだ両手に、震えとなって現れる。
「翔さん、どうしたの?」
俺の隣にいるこの男は一体誰だ…
こんな男、俺は知らない…
それでも誰かに縋りたくて、誰かに助けて欲しくて…
自然と熱くなった目頭が、俺の視界を歪ませた。
「この人おかしいんだ…。おかしなことばっか言って…。最初っから何もなかったのに、あったって…」
そう…、テーブルの上には、最初っから何もなかった。
それなのにこの男は…
「何か喉乾いちゃったな…。一緒に飲み物買いに行きましょうか?」
俺の前にもう一人の男がしゃがみ込み、俺の震える手に、その男の手が重なった。
俺の手を包み込んだその手は、とても暖かくて…
気付いた時には、俺はその手をギュッと握っていた。