• テキストサイズ

桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第7章 I


「ここに出した物、言って貰えますか?」

俺が椅子に座るのを見はかっらったように、メガネの男がテーブルを指さし言う。

何を言っているんだろう…

首を傾げる俺に、レンズのむこう側の目が細められる。

「どうしました?」

俺の答えをせ急かしているわけではない。
それはその口調からも読み取れる。

でも、俺にはこの男の”意図”が分からない。

何のために、この男はこんなことをしているんだろう…

分からない…
俺に何を求めている…?

心の中で湧き上がってくる不安が、膝の上で固く結んだ両手に、震えとなって現れる。

「翔さん、どうしたの?」

俺の隣にいるこの男は一体誰だ…

こんな男、俺は知らない…

それでも誰かに縋りたくて、誰かに助けて欲しくて…

自然と熱くなった目頭が、俺の視界を歪ませた。

「この人おかしいんだ…。おかしなことばっか言って…。最初っから何もなかったのに、あったって…」

そう…、テーブルの上には、最初っから何もなかった。

それなのにこの男は…

「何か喉乾いちゃったな…。一緒に飲み物買いに行きましょうか?」

俺の前にもう一人の男がしゃがみ込み、俺の震える手に、その男の手が重なった。

俺の手を包み込んだその手は、とても暖かくて…

気付いた時には、俺はその手をギュッと握っていた。
/ 143ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp