• テキストサイズ

桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第7章 I


何もかもが怖くて仕方がない。

今、俺の目の前でいかにも人の良さそうな顔したこの男も…

俺達を取り囲む、周囲のざわつきさえも…全ての物に恐怖を感じる。

第一、この男が何を考えているのか、俺にはさっぱり分からない。

物腰は至って柔らかだが、俺を見る目は全てを見透かしているような、そんな気がしてならない。


テーブルの上に並べられた、この三つの物に、一体何の意味があるんだろう?

分からない…
ただ怖くて、自然に震え出す両手を、ギュッと握り締めることしかで出来ない。

そしてわけも分からず込み上げてくる怒りにも似た感情。

とうとう堪えられなくなった俺は、苛立ち交じりに席を立った。

「俺、急ぐんで…。行くよ、智君」

気付いた時には、堪らず智君の腕を掴んで一歩を踏み出そうとしていた。

急いでどこに行くのかなって、分からなかった。

ただただこの場から、恐怖しか感じられないこの空間から、一刻も早く立ち去りたい…その一心だった。

それなのに…

「これで終わりにするから…」

顔色一つ変えることなく言う男。

そして「座ろ?」と言って俺を椅子へと引き戻そうとする智君。

俺は納得いかない思いを胸に抱えたまま、智君の頼みならば、と自分に言い聞かせて再び椅子に腰を下ろした。
/ 143ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp