桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第1章 S
メットインを開け、メットを取り出し、そこに買ったばかりの弁当とペットボトルの袋を放り込む。
そう言えばさっきの人…
ふとあのホームレスの事が頭を過ぎる。
まさかな…
違うよな…
だってあの人は…
でも、あの声といい、“目”といい…
他人と言うには、余りにも似ている。
でも、あの人がまさかな…
俺は両手で頬をで叩くと、バイクに跨った。
違う、人違いだ。
あの人である筈がない。
うん、違うよ…な…?
頭に浮かんだ無数の“?”マークをかき消すように、ハンドルを回してアクセルを蒸す。
バイト先のスタンドからアパートまでは、バイクで約20分。
コンビニのある交差点を曲がればもうアパートはもうすぐそこだ。
腹減ったし、早く帰って飯食いてぇ。
オレの思いに応えるように、腹の虫がグルルッと返事を返した。
通りに出て再びバイクを走らせ始めた俺の前に、黒い人影のようなモノが飛び出して来た。
俺は咄嗟にブレーキをかけ、バイクを影にぶつかる寸での所で急停車する。
「…っぶねぇーなー! どこ見て…えっ?」
衝突の衝撃は感じなかった。
なのに…
「うそだろ…?」
バイクの前輪のから数センチも離れていない場所に横たわる…人の姿。
あのホームレスだ…