桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第1章 S
エンジンを停め、バイクを飛び降りた。
「あ、あの…大丈夫…ですか?」
かける声が震える。
おまけに地面に張り付いた足は、ガタガタと震え、そこから動こうとはしない。
「あの…ちょっと…」
もう一度声をかけるけど、やっぱり反応は…ない。
マジかよ…
血の気が引く、ってこうゆうこと言うのかな?
目の前は暗くなるし、指先だって超冷たくなってるし…
『25歳アルバイト店員、バイクで跳ねてホームレス死亡』
俺の脳裏に新聞の見出しが浮かぶ、
いやいや、ありえねぇってば…
大体が飛びだして来たのは、この目の前でひっくり返ってるホームレスであって、跳ねてもない俺に過失は無い筈…
このままにしとくか…
そしたら誰か…
『25歳アルバイト店員、ホームレスを轢き死亡させた上に、逃走』
いやいや、それも違うからっ!
つか、このホームレスって、さっきコンビニで揉めてた人だよな?
俺の記憶の、遥か彼方に仕舞いこんだ、あの人の面影に良く似た人…
だあ〜っ、仕方ねぇ!
俺はピクリとも動かないホームレスを抱き抱えると、何とかバイクの後部に座らせ、自分もバイクに跨った。
振り落としてしまわないように、脱力した腕を引き寄せ、腰に巻き付けると荷造り用のビニール紐で括った。
「これでよし、と…」
落っこちんなよ…?
俺は再びバイクのエンジンを蒸した。
『S』完