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桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第6章 A.


ニノに着いて食堂に入ると、俺達を出迎えてくれたのは、いかにも人の良さそうな笑顔の医師だった。

歳は、俺達とそう変わらないくらいに見える。
いや、もしかしたらもう少し上、なのかもしれないけど…

「どうも、こんにちは」

白衣を纏ったその人は、俺に向かって名刺を差し出すと、“どうぞ”と言って椅子に座るよう促した。

椅子に腰を下ろしながら、受け取った名刺に視線を落とす。

“神経内科 井ノ原快彦”

そう書かれた小さな紙を、俺はポケットに捩じ込んだ。

翔さんに見られたくなかったから…

「ニノ君から簡単に話は聞きましたが…彼が?」

井ノ原先生の視線が翔さんに向けられる。

俺は質問には答えず、無言で頷いてみせた。

「そうですか…。まだお若いですよね?」

「俺らより、一個上の学年だから、26?かそんなもんじゃない?」

大方の予想はしていたものの、この状況に戸惑うばかりで何も言えない俺の代わりに、ニノが答える。

翔さんにしたってそうだ。
きっとこの状況を把握しきれてない様子で…。
落ち着きなく、手を握っては開きを繰り返している。
時折俺に向けられる視線も、動揺を隠しきれず…

「ねぇ、智君、この人は君のお友達?」

なんて不安そうに聞いてくる。

どうしよう…
俺はなんて答えたらいいの?
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