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桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第6章 A.


ニノがスマホで連絡を取っている間、待合室の椅子に二人で並んで座った。

翔さんは何とも落ち着かない様子で、視線をアッチヘコッチヘとキョロキョロさせている。

「どうました?」

俺はまだ火傷の痕が微かに残る翔さんの手を握った。

「ここは…どこ…なんでしょうか…?」

「病院、だよ?」

「…そうですか」

そう言ったまま、翔さんはまた怪訝そうな顔をして、キョロキョロし始める。

そして、また…

「ここは…?」

「病院ですよ」

俺達は同じ言葉を何度も繰り返した。

多分ニノが考えていることは、俺が翔さんの異変に気付いた時に思ったことと同じだろう。

「お待たせ。ここじゃなんだから、食堂でどうか、ってさ…。翔さん、行けそ?」

ニノが翔さんの顔を覗き込む。

そのニノの顔を、翔さんがジッと見つめる。

そして…

「君は確か…、二宮…君、だったね?」

瞬間、ニノの顔から笑顔が消える。

「そう…ですよ、二宮です。お久しぶりです、櫻井先輩」

至って冷静に言葉を返すニノ。

でも、その顔にはやっぱり笑顔はなく…

「行きましょうか…」

そう言うと、俺達の前に立って歩き出した。

「翔さん、行きますよ?」

俺は翔さんの手を引いた。

「どこへ行くの、智君?」

また、だ…

俺は翔さんに見えないように、キュッと唇を噛み締めた。
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