桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第3章 K
櫻井翔“もどき”は弁当をペロッと平らげると、腹が満たされたせいか、続いて襲ってくる睡魔と戦うこともなく、呆気なく白旗を上げた。
コックリコックリと船を漕ぎ出した櫻井翔“もどき”を抱き上げ、ベッドに寝かせると、ものの数秒も経たないうちに、気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。
頬にかかる程伸びた髪を指で掬ってみる。
ますます似ている。
俺の想い出の中の“櫻井翔”に…
でも、俺の知ってる“櫻井翔”はもっと…
そうだ、アイツなら何か知ってるかも。
俺は突然思い立ってスマホを手にし、櫻井翔“もどき”が熟睡していることを確認してから、隣の物置状態になった部屋へと移動した。
スマホのアドレス帳を開き、懐かしい名前をタップした。
高校時代の同級生、松本だ。
松本とは趣味も性格も、全くの正反対だったが、ある事をきっかけに親しくなった。
松本は大野先輩に、ただの憧れとは違う感情を持っていたから。
そう、俺と松本は、ある意味“同類項”だった。
松本は高校卒業後の大野先輩と、頻繁ではないが連絡を取り合っていると言っていた。
松本なら、大野先輩から何か聞いているかもしれない。
俺はそう思った。
「もしもし、雅紀?」
数回のコール音の後、聞こえて来たのは懐かしい声だった。