桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第3章 K
松本の話はこうだ…
大野先輩とは、高校卒業後も数年は関係を続けていたらしいが、大野先輩が絵の勉強をするため、海外留学をしたことをきっかけに、二人は別々の人生を歩むことにした、と…
つまりは、別れたってこと、だよな…?
一人日本に残った翔さんは、大学卒業後、業界内最大手と言われる不動産関連の会社に就職をしたらしい。
それは俺も風の噂に聞いたことがある。
誰もが一度は耳にしたことのある、有名な会社に就職した、と。
元々成績も常にトップをキープしてたし、生徒会長まで務めるような程の人だから、それも当然と言えば当然。
でもだったらどうして?
人も羨むような有名企業に就職して、エリート街道真っしぐら、順風満帆な人生を約束された筈の人が、どうしてこんな姿に?
今俺の目の前にいる、櫻井翔“もどき”は、やっぱり俺が憧れ続けた“櫻井翔”ではないのか?
はあ…、なんか余計に混乱してきたよ…
松本に聞くんじゃなかった、と後悔した所でもう手遅れだ。
いくら考えを巡らしてみたところで、結局は“どうして”に戻ってしまう。
これじゃ、堂々巡りもいいとこだ。
答えの出せない思考に終止符を打つため、俺はベッドに潜り込んだ。
シングルのベッドに、大の男が二人…
少々窮屈だけど、仕方がない。
何たって布団はこれっきゃないんだから。
俺は夢にまで見た翔さん…実際には“もどき”だが、の温もりを感じながら、瞼を閉じた。