桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第14章 SAKURABA
「どう、美味しい?」
答えなんて返って来る筈ないのにね…
それでも“美味い”の一言が聞きたくて、墓石に向かって問いかける。
「ごめんね? 本当はもっと早く来ようと思ってたんだけどさ、中々受け止められなくてね…」
気付けば、翔さんがこの世を去ってから、三年が過ぎていた。
「あ、俺ね、仕事始めたの。スタンドじゃなくて、新しい仕事ね? なんだと思う?」
当ててみてよ…
「俺ね、今介護施設で働いてんの。まだまだ見習いだけどさ、ちゃんと資格も持ってんだぜ? 凄くない?」
あれだけ介護の呪縛から逃れたいと思ってたのに、おかしいよね…
「爺さん婆さんばっかの施設なんだけどさ、もう大変でさ…。毎日ヘトヘトになるまで働いてるよ…」
俺は自嘲気味に笑って、紙コップのカフェオレを一口啜った。
「あ、マジッ…」
すっかり覚めてしまったカフェオレは、ほんのり線香の香りがした。
「今度来る時はさ、缶のにしようか? それとも俺が煎れたのの方がいい? …ねぇ、翔さんはどっちがいい?」
何度問いかけてみたとこで、答えなんて返ってくることはないのに、それでも俺は聞かずにはいられなかった。
“缶なんかじゃなくて、
お前が煎れたカフェオレが飲みたい”
って…