桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】
第13章 AIBA
翔さんの顔が見る見る苦痛に歪んで行くのを、涙で曇る視界の中で見ていた。
ごめん…
ごめんね…
何度も心の中で謝罪の言葉を繰り返しながら、それでも俺の手は緩まることはなかった。
その時だった…
暫く鳴る事のなかったスマホが、軽快なリズムを響かせながら震えた。
ニノだった…
俺は翔さんの首に巻き付けた手を解き、スマホを手に取った。
激しく咳き込む翔さんを部屋に残し、寝室を出た俺は、震える指で画面をタップした。
「…もしもし?」
声が掠れる。
「あ、相葉さん? 暫くそっち言ってないけど、どうしてるかな、って…」
いつもと変わらないニノの声に、それまで張り詰めていた感情が、一気に解きほぐされて行く。
「ニノ…、俺さ…最低だよ…」
翔さんを殺して自分も…なんて…
そんな事を、一瞬でも考えた俺は最低だ…
「何があったかは聞かないけどさ、ちょっと落ち着こ? 相葉さんさ、疲れてるだけだから。ね?」
電話越しでしゃくり上げるように泣く俺に、ニノがまるで子供をあやす様に言う。
「なんならさ、今日は無理だけど、明日ならそっち行けるからさ、ゆっくり話聞くよ?」
涙が止まらなかった。
俺は一人じゃない…
そう思えた。
でも俺は…
「…大丈夫。…大丈夫だから、心配しないで?」
この汚物とゴミで溢れかえった現状を、ニノにだけは見られたく無かった。