第13章 AIBA

掴んだ手首を引っ張り、無理矢理立たせようとするけど、その手は振り解かれ…

代わりに残ったもう一方の手が、俺の頬を掠めた。

｢…ぃ…って…」

頬に感じる熱い痛みに、全身の血液が沸騰するような…どうしようもない怒りがこみ上げてくる。

｢立てって…。なぁ…、立てよっ！」

俺の声に、翔さんの身体がビクンと震えて、怯えたようにプルプルと首を振る。

｢相葉さん、ちょっと落ち着こ？　翔さんも、ね？」

ニノが俺と翔さんの間に割って入った。

でも俺の気持ちは落ち着くことはなくて…

｢どけよ…。どけってば！」

まだ腕の自由が利かないニノを押し退け、翔さんの手を掴むと、右手を振り上げた。

｢雅紀、やめろ！」

滅多に呼ばない呼び方でニノが叫ぶけど、もう遅くて…

一回り小さな翔さんの身体が吹き飛んだ瞬間、俺の視界は真っ暗になった。

｢うぅぅっ…、あぁぁぁっっっ…!!!!」

翔さんが赤く腫れた頬を抑え、すっかり細くなった足をばたつかせ、泣き叫ぶ。

｢翔さん、大丈夫だから…、落ち着いて？」

床に投げ出された翔さんを抱き起し、ニノが宥めるように背中を摩る。

それでも翔さんが泣き止むことはなく…

｢ごめんなさい…、ごめんなさい…、許して下さい…」

大きく見開いた目には、今にも零れ落ちそうな大粒の涙が浮かんでいて…


俺はジンジンと痺れる右手を、ただジッと見つめていた。