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桜の葉が舞い散る季節、貴方の傍に居られたら… 【気象系】

第13章 AIBA


「ニノの方こそ、腕の調子どうなんだよ?」

先週まで腕に巻かれていたギブスが、今は外れている。 

「まあ、まだあんまり無理は出来ないんだけどね? なんとかね」

そう言ってニノは腕を回して見せた。

良かった…

俺はそっと胸を撫で下ろした。

「ところで翔さんは? 寝てるの?」

空になったマグをテーブルの上に置き、ニノが腰を上げる。

「ああ、薬の加減でさ…。昼間は殆ど寝てるか、ボーっとしてるかのどっちかだね」

多分今も…

「ちょっと見てきてもいい?」

「起こすなよ?」

今はこの穏やかな時間を邪魔されたくない。

「分かってるって」

ニノがキッチンと寝室を隔てるガラス戸を、音を立てないよう静かにに引く。

「あれ? 翔さん起きてんじゃん。…つか、何、この匂い…」

匂いって、まさか…

俺は下したばかりの腰を持ち上げ、ニノを押し退けて寝室に飛び込んだ。

「うっ…」

途端にむせ返るような匂いが鼻をつく。

「ねぇ、翔さんもしかして?」

ニノが口と鼻を手で覆う。

俺はそれには答えず、ベッドに寄りかかって座る翔さんに歩み寄ると、手首を掴んだ。

「立って?」

翔さんの感情のない目が俺を見上げる。

「立ってよ」

もう一度同じ言葉を繰り返すけど、反応はない。

「立てってば!」

何度繰り返しても、何の反応も示さない翔さんに、苛立ちが込み上げてくる。
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