第14章 朋友
「そもそも、日菜乃って岡本さんが好きなの?」
その言葉に言葉が詰まる。
「え?」
「いや…何て言うか…この前、話したときは『好きかも』って感じだったでしょう?」
「だって…」
「岡本さんのことを思うと涙が出るし…」
「月島さんを見つめる岡本さんを見るのが、すごく辛い。」
「月島さんって言うのが、さっき言ってた人なのかな?」
小さく頷く。
「日菜乃はさ。岡本さんが好きなんじゃなくて、日菜乃を好きな岡本さんが好きなんじゃないの?」
「月島さんを見つめる岡本さんが辛いのも、日菜乃じゃない他の人を好きな岡本さんを見るのがイヤなんじゃないかな。」
「結局は、日菜乃は自分から好きになってるつもりでも…本当は日菜乃を好きなその人を好きになってる気がする。」
「ユキさーん。」
数席隣の席から声が掛かる。
「あ。ごめん。もう行かなきゃ…」
「大丈夫。お仕事に戻っていいよ。」
心の奥を見透かされたようだった。
自分でも気付かなかった。
うぅん。
気付かないフリをしてたのかもしれない。
食事に誘ってくれるのが嬉しかった。
手を繋ごうって言われて、繋いだ手が好きだった。
夕陽があたる横顔が好きだった。
現場でふと視線が合うだけで幸せだった。
自分に想いを向けてくれる。
その安心感が好きだった。
心の中でガラガラと何かが崩れるような音がした。