第14章 朋友
口に含めば、ベリーの甘酸っぱさとまろやかなミルクが口いっぱいに広がる。
アルコールの低いカクテルなんて、自分じゃ絶対に頼まないから新鮮。
こう言うカクテルを頼めばモテるのかな?
そんな考えに至る自分に嫌気がさす。
両肘をカウンターに付けて、頬杖をついては目の前の棚に置かれたリキュールを眺める。
あの人はどんなお酒が好きなんだろう。
甘いもの以外なら、どんな食べ物が好き?
どんな女性が好き?
本当に何も知らないんだなぁ…
泣くほど好きなのに?
本当に好きなの?
何で泣いたの?
何がしたいの?
疑問ばかり。
自分の事なのに何も分からない。
私は何がしたいんだろう……。
「今度は考え事?」
その声に視線を向ければ、ユキが新しいカクテルを手に歩みを進める。
「それ。」
指さされた先を見れば、残り少ないカクテル。
そのグラスを片手でクルクルと回せば、中の氷も同じように回る。
「グラスをクルクルするの癖だからね?」
「え?」
「遠くを眺めて、グラスをクルクル。」
「前にも見たことあるから。」
「少なくともその時は、悩んでた。」
顔を近づけ様子を窺う。
「あはは。ユキは、記憶力良いよね?」
「それが仕事だから。」
得意気に鼻を鳴らす。
プライベートでは、おろしたままの髪も仕事の時はアップに纏める。
「やっぱり仕事となるとキリッとするよね?」
「話逸らさないの。」
「あはは。すみません。」
「ずっと付きっきりって訳にはいかないけど、話したいなら聞くよ?」
「うーん。何から話せばいいのか分からない。」
見透かすような視線に、無意識に視線を逸らす。
「この前言ってた岡本さん関連?」
「………。」
「正解みたいだね。」