第10章 虚威
初めて見る達央さんの車。
四駆のドイツ車。
イメージ通りのブラックの車体が駐車場の照明を反射して光を放つ。
助手席の窓を下げ、身を乗り出す達央さん。
「早く乗れよ。」
その言葉に従い、車体の高さに若干苦戦しながら乗り込んだ。
「家どこ?」
「○○です。○○駅から少し離れてるんですが…」
「近くまで行ったら案内して。」
「あ。はい…。」
そこからは、無言の空間に包まれ息苦しさを感じるものの数十分走ると見慣れた風景にホッと胸をなで下ろす。
「その先の信号を右折です。」
「そこを左折で。」
「………なぁ…?」
「はい?」
「もしかして…あのマンションだったりする?」
指差された先に建つ高層マンション。
「そうですけど。」
達央さんを窺うと少し驚いたように目指すマンションを見つめていた。