第8章 享楽*
あれからどれくらい時間が経ったんだろう。
カラダの熱も引いて、ようやく立ち上がれるようになった。
部屋の電気を付けて、事の重大さに気づく。
サイズの合わないジャケットに、グルグル巻かれたストール。
グレイのワンピースは、濡れて色が変わっている。
ストールを外せば、所々白濁しているのが見てとれた。
「はぁ…」
再度ストールを巻き直し、身支度を調える。
『またシような?』
『インランな日菜乃ちゃん。』
思い出すだけで、再びカラダの芯が熱を帯びる。
先ほど見つけたワンピースの汚れ。
本当に私はどうかしてる。
誰にも会わないように逃げるようにスタジオを出た。