第77章 待望
広いエントランスを歩けば靴音が響く。
部屋番号を押してインターフォンを鳴らせば、何の返事がなくても開くドア。
奥にあるエレベーターへ乗り込み目的の階を押す。
ぐんぐん上がるカウンターの数字に比例するように広がる視界。
いつもながら恐縮してしまう。
今日こそ揺るがないように。
そう思うのに………
視線を落とせば到着を知らせる音。
開く扉に歩みを進めれば足下に感じる上質の絨毯。
この道の先は黒い靄が掛かるよう。
それでも迷わず歩みを進められるのは、言わなきゃいけないことがあるから。
もう頭の中で定位置が出来るくらい、居続ける言葉。
『 』