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逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第75章 斜眼


手を近づけたり遠ざけたり。

一つ一つの仕草が可愛いよね。

「どうしましょう。」

「信彦さんならどれがいいですか?」

眉を寄せて本気で悩む日菜乃ちゃん。

許されるならこの場で抱きしめたいくらい愛おしい。

さすがに公共の場でそんな事なんて出来ないから我慢するね。

「んー。ゴールドかシルバーかな。」

そう言って、シルバーのリングを付けてみる。

「男性が付けるなら、こっちの方がいいかもしれませんね。」

「じゃあ、シルバーにします!」

目の前にあったリングを人差し指に付けて、うんうんと頷く。

「これ、2つお願いします。」

「このまま付けていくので。」

「それから。」

声のトーンを落としてスタッフさんに耳打ち。

「この前お願いしてたの出来てますか?」

「はい。ご用意出来ております。」

ボク達のやり取りを見てキョトンとする日菜乃ちゃん。

「少し待っててね?」

日菜乃ちゃんをイスに座らせ、少し離れたスタッフさんの元へ。

「岡本様。ご確認をお願い致します。」

目の前に出されたトレイには、お揃いのリング。

「『ア・リング』のイエローゴールドでございます。」

手に取り、リングを確かめる。

ダイヤを蟻が運ぶデザイン。

ダイヤがまるで砂糖みたい。

日菜乃ちゃんと砂糖みたいな甘い生活を…

なんて。

今の状況で、それはなかなか難しいかも。と自答して苦笑いをしてしまう。

「間違いないです。ありがとうございます。」

「こっちはラッピングして貰えますか?」

「後で渡すので。」

「岡本様に大切に想われる方はとても幸せでしょうね。」

「あはは。そうだといいですけどね。」





支払いを済ませ、バックを持ち日菜乃ちゃんの元に戻る。

「信彦さん!あの…ありがとうございます。」

「いいのいいの。お揃いで付けていようね。」

「このデザインなら、いつも付けててもファンの子達に疑われないし。」

「あ。……でも。同じの買っちゃうかも。」

「いいじゃないですか。みんなでお揃いですね。」

「それなら私も堂々と付けられますし。」

そんな風に笑う日菜乃ちゃん。

「じゃあ、家に帰ろうか。」

手を差しのべれば、その手を掴んでくれる。

当たり前のようなやり取りが嬉しいんだ。
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