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逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第75章 斜眼


「さて。着いたよ。」

「…ここは?」

「来れば分かるよ。」

ぐるっと回り助手席のドアを開ける信彦さん。

「さぁ?行こうか。」

差しのべられた手を取れば、当たり前のように手を引かれ車外に出る。

品の良いイルミネーションの間を抜けながら少し歩けば、見覚えのあるロゴのショップ。

時間的に閉店のはず。

扉も閉ざされてる。

それでも迷うことなく信彦さんは扉を引く。

開く扉。

その先には眩い光に可愛い店内が見えた。

「いらっしゃいませ。」

「お待ちしておりました。」

慣れたようにスタッフに会釈をする信彦さん。

「こんな時間にすみません。」

「いえいえ。岡本様にはお世話になっておりますので。」

「日菜乃ちゃん。おいで。」

咄嗟に背中に隠れてしまった私に振り向き手招きをされた。

「こんばんは…」

すぐ顔を視線を外すのは失礼だと思っていても、何の心構えもなく連れて来られると対応しきれない。

「すみません。人見知りが強くて。」

「突然連れて来ちゃったから、余計に強く出ちゃったかな。」

ポンポンと頭を撫でられる。

「すみません…」

煌びやかな店内に肩をすくめてしまう。

顔を上げると少し離れた所に数名いるスタッフ。

その視線が痛い。

コホンっと小さく咳をする信彦さんに視線を向けると申し訳なさそうに微笑む。

「えーっと。ボクの大切な人です。」

その言葉に胸の奥がザワザワするのは何故だろう。

「ここのスタッフさんの事は信用しているので。」

「ボクも日菜乃ちゃんも、このお店が好きで。」

「この前、期間限定店舗には二人で行ったんですよ。」

「そしたら、また行きたいって日菜乃ちゃんが。ね?」

そう言って、ニッコリ笑い掛けてくれる。

コクコクッと大きく頷けば嬉しそうに笑顔を返してくれた。

「ミルククラウンのリング欲しいって言ってたよね?」

「はい。」

「どの色にする?」

「えっと…」

ショーケースの上に出されたリングは何色もあって迷ってしまう。

「付けてみる?」

「いいですか?」

「どうぞ。お試しください。」

数点のリングを付けて、手を近づけたり遠ざけたりしても決まらない。

「どうしましょう。」

「信彦さんならどれがいいですか?」

「んー。ゴールドかシルバーかな。」
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